2016年2月4~6日に い草の産地 熊本県へ研修に行ってきました。
今回で2回目になります。メンバーは福井県の若手畳店で結成した『福井畳の会』の4人です。
案内役をお願いしたのが、田淵 稔さん。
(イ草農家さんとの懇親会の後に撮った写真)
田淵さんのイ草工場へ
八代駅で田淵さんと待ち合わせをし、田淵さんのイ草工場へ行きました。
畳表になる前のイ草が袋詰めされて保管されています。
(田淵さんの作ったイ草の前で写真 僕の肩までイ草が伸びています)
市松模様の畳表を織っています。
イ草を織って畳表にする工程の動画になります。
国産なので、ちゃんと「紺色(麻引き表の場合)」の熊本県で生産された証としての熊本県証糸がセットされています。
畳表を製織している工場を見せて頂いた後は、イ草を育てている田んぼに移動しました。
今は、根をはらす時期になります。田んぼのイ草を抜いて説明していただきました。
田淵さんが開発した「ウォータージュエリー加工畳表」
田淵さんは、畳表に付加価値をつける努力をされています。
最近発売された、『ウォータージュエリー加工畳表』もその一つです。
ウォータージュエリー加工された畳表は、撥水性能があり、液体をこぼしても水玉になって畳が汚れません。
見て下さい、この撥水力!!凄いですネ。
ウォータージュエリー加工していない畳表の場合は、次第に畳表に水が染み込んでいきます。
素晴らしい商品を開発された田淵さんですが、製品化されるまでには沢山の苦労があったそうです。
イ草を織る直前に特殊な液につけるそうですが、最初はイ草がぐちゃぐちゃになってしまい製品にならなかったそうです。そこから液の調合配分などを工夫し、3年以上かかり製品化されたそうです。
ウォータージュエリー畳表は、表面だけを加工したものではなく、イ草の中まできちんと浸透させているため、イ草が傷んだり裏返しをしたときでも、ちゃんと撥水してくれるそうです。
ペットがいるお家、小さいお子様のお部屋、介護施設、飲食店などにおすすめの商品です。
2日目…、
天津 謙治さんのイ草工場へ
朝から天津さんのイ草工場にいきました。今回で2回目です。
以前より織機が増えていて、現在8台稼働していました。
天津さんのイ草を見せて頂きました。
穂先の枯れが少なくしっかりと身の詰まった素晴らしいイ草でした。ここまで穂先の枯れをおさえられるのは簡単にできることではなく、大変な努力をされています。
特にイ草を育てる「土づくり」を本当に大事になさっていて、熱く語っていだだきました。
また、畳表に”銀河”という名前をつけて販売したのも天津さんが最初だったそうです。
その時には、周りの人から「そんなことをすると名前に傷がつく」など、いろいろ言われたみたいです。が、今ではこれが当たり前になり、他の農家さんもいろいろと制作されています。
息子さん夫婦もイ草作りを手伝っており、今回、初めて息子さんが1つの田んぼを任せられたそうです。
(僕と同じ、四代目の天津 弘也さん)
天津さんの畳表はトップクラスの品質をほこり、たくさんの畳店から注文を依頼され頼られる農家さんであり、数え切れないほどの賞を受賞しています。
【受賞歴】
平成元年9月 熊本県知事賞
平成15年2月 い業振興協議会長賞
平成16年2月 い業振興協議会長賞
平成20年10月 全い連会長賞
平成22年 全国い業連合会長賞
平成24年 第38回熊本県い草・い製品品評会 全国い生産団体連合会会長賞
平成25年 第39回熊本県い草・い製品品評会 全国い生産団体連合会会長賞
平成26年 い業大会 農林水産省九州農政局長賞(い製品)
後日、第42回熊本県い業大会「い草・い製品品評会」において、一番素晴らしい畳表を作られた農家さんにだけ贈られる『農林水産大臣賞』を受賞されました。おめでとうございます。
堀口 義孝さんのイ草工場へ
次に伺ったのは、「堀口 義孝」さんのイ草工場です。
午後からは、『藺草・藺製品研究会』主催の勉強会に参加してきました。
講師は、元岡山県農業試験場作物研究室室長の「池田正人」氏。
テーマは、「イ草と気候」についてです。
今後、温暖化が進むとブドウ糖とタンパク質が作られにくくなり、いいイ草が育たない。
イ草が先枯れをしてしまうとブドウ糖が少なくなり、いいイ草が育たない。など、イ草と気候についてご説明をしていだきました。
「購入した畳表を一番いい状態で保存しておくための条件」について質問してきました。
夕方からは、池田先生と『藺草・藺製品研究会』所属のイ草農家さんや問屋さんなど、約25名ほどで懇親会に参加しました。
3日目…、
平川 公治さんのイ草工場へ
1年物、3年物、4年物、5年物と年数の違う畳表を実際に見せていただき説明をしてくださいました。
”刈り取ったイ草をすぐに織った畳表の方が青々していて新鮮でいいんじゃないの!”と思われるかもしれません。
実は違うんです。
イ草と折り込んである糸がなじむまでに、半年近くかかります。
さらに、イ草を寝かせることにより畳表が熟成され、粘り気がでてきて優しい香りに変化します。
意外かもしれませんが、畳表は1年から3年ほど熟成させた方がいい品物になるんですね。
滑らかな肌触りでキレイな畳表です。
しっかりと温度と湿度調節された部屋で保管されています。
吉住 忍さんのイ草工場へ
【受賞歴】
第22回 い草の里まつり 優秀賞
第25回 い草の里まつり い業部長賞
平成24年度 い草の里まつり 農協長賞
【吉住さんからの一言コメント】
毎年、堆肥を散布し、土づくりに努力し、高級有機肥料を使って良質原草造りに頑張っています。
今年は高野山1200年祭の畳替えに、我家の畳表が使われました。
織機に入れる前に、イ草をチェックしています。
イ草の根白(根元の白い部分)を調べ、折れていたり上がってきているイ草は取り除かれます。
次に、折れている草がないかを調べています。
深川 俊一さんのイ草工場へ
深川 俊一さんのイ草工場では、目積表・本間市松表・青龍びんなど多品種の畳表を織っています。
市松模様の畳表です。
縁無し畳といえば中国産を使用するのが多いですが、国産の縁無し畳は艶があり綺麗です。
床の間は、最初から黄色(天日と夜づゆにさらして黄色く発色させた)畳表を使うのが多いのですが(下の写真みたいに↓)
今回みせていただいたのは、青龍鬢表(あおりゅうびんおもて)です。
今回の熊本研修は、たくさんのイ草農家さんとの出会いがありました。
忙しい中、仕事をとめてまで説明をしてくださりありがとうございました。
これからも玉木畳店は国産畳の素晴らしさをお客様にお伝えしていきますので、よろしくお願いします。